競争の激しいガジェット系製品のプロモーション戦略をリサーチで探ってみる
プロモーションの戦略策定には「リサーチ」が不可欠。
技術進化と価格競争が熾烈なガジェット系プロダクト。市場で優位に戦うには、変わりゆくユーザーのニーズや、そのニーズに至った背景や理由を把握し、クイックにプロモーションに反映していく必要があります。そして、そこに不可欠なのがリサーチです。
ここではプロモーションの戦略策定に役立てるために行った、イヤホンに関するリサーチ内容をご紹介。市場競争の激しい製品を扱うマーケターの皆さんの参考情報になれば幸いです。
想定ユーザーにズレはないか?用途の現状から戦略を見直す。
動画鑑賞の用途が多数。その他、ゲームや会話に利用する人も。
スマホで利用できるサービスやコンテンツが増え続ける昨今、デジタルガジェットの用途も日々変化していくのが道理です。ユーザーが今何に使っているのか、今後は何に使われそうなのか、その理由にも目を向けリサーチすることは、プロモーション戦略を考える上で重要なステップです。
今回調査を行ったイヤホン・ヘッドホンの場合、音楽を聴くための機器というイメージがありますが、実際の用途を見てみると、「音楽鑑賞」と同様に「動画鑑賞」の多さも目立ちました。この要因には、YoutubeやTikTokといった動画系アプリの定着があると思われます。まだ少数派ではあるものの「音楽・映像関連の制作や編集」の用途で利用する人も見られ、これもYoutubeやTikTokのクリエイターの存在が関連していそうです。
「動画鑑賞」に次いで多かったのが「ゲーム」と「オンラインチャット・通話」。ゲームの場合、ゲームの世界への没入感が得られたり、他のプレーヤーとのボイスチャットが聞き取りやすいという理由で利用する人が多いのでしょう。オンラインチャット・通話については、コロナ禍におけるテレワーク、オンライン会議の増加が影響していそうです。
どの用途も、音をはっきり聴き取るためであると同時に、自分を除く周囲の人にその音が聞こえないようにするため、という目的も含んでいると思われ、スマホやPCの「音」マナーにも関わっていると言えそうです。
今回の結果を見ると、イヤホン・ヘッドホンの用途は音楽鑑賞に留まらず、時代の変化とともに多様化しており、その結果、それぞれの用途に適した仕様がユーザーニーズとして表れることになるでしょう。
ユーザーの期待や願望の実態は?開発や販促の正しい方向を探る。
ユーザーが期待するのは、装着感の向上や使用シーンの拡大。
イヤホンに限らず、最近のデジタルガジェットは多種多様な機能や特徴を持っていますが、ユーザーが「あったらいいな…」と感じているものは何か、正しく把握できているでしょうか?
きちんとリサーチをしないまま「ユーザーはさらなる音質向上を求めてる」「音質の高さをアピールするほど、ユーザーの購入意欲が高まる」といった仮説や想像で、開発や販促を進めていないでしょうか?
今回、イヤホンによく見られる18項目の機能や特徴について、ユーザーの期待が何に向いているのか探ってみたところ、結果は、1位が「耳への負担を少なくする人間工学設計」、2位「防水」、3位「ノイズキャンセリング」でした。
1位の「人間工学設計」については、スマホの利用とともにイヤホンの利用機会も多くなり、長時間装着している人が増えた結果、耳への負担といった健康面への意識が高まっているのではないかと推測します。
事実、イヤホンを選んだ際に重視した項目を問うアンケート(全10項目から選択)では、価格と音質に次いで、装着感がランクインしており、ユーザーの関心の高さが伺えました。
「あったら嬉しい機能や特徴」で2位となった「防水」に関しては、お風呂や屋外、運動時など、水や雨、汗を気にせず幅広いシーンで使用したいという需要の表れではないでしょうか。Wi-FiやBluetoothといった便利な機能のおかげで、どこででも音楽や音声コンテンツを楽しめるようになったことも関連しているでしょう。
3位の「ノイズキャンセリング」は、Apple製品でも一時話題となりましたが、周囲の音を遮断して音楽に集中できるとして、支持する人が急増しています。こちらも音楽に集中するだけでなく、勉強や仕事に集中する目的など、使用シーンが多様化していることが支持の要因と考えられます。
結果の上位には、音質などの特定の機能や特徴が並ぶかと思いきや、まったく種類の異なる3つが入り、ユーザーのニーズが多岐に渡っていることが分かりました。これは、開発や販促において的が絞りにくいという課題にもつながりますが、だからこそ、仮説や想像ではなくリサーチで得た結果をもとに意思決定を行わないと、ユーザーの実態とは大きくかけ離れた方向へ進む危険性があるとも言えるように思います。
なお、同一の18項目について「必要だ」と思う機能・特徴を調査したところ、上位から「音が途切れない」「Bluetooth」「ワイヤレス」「ペアリングのしやすさ」という結果でした。
「音が途切れない」はイヤホンの基本性能なので当然として、相互に作用する「Bluetooth」「ワイヤレス」「ペアリングのしやすさ」の3つの機能がすべてがランクインしたことは、ワイヤレスタイプの人気、シェア拡大が確かで、すでに多くのユーザーが当たり前と認識しつつある…とも言えます。そのため、これらの機能がない、またはあってもクオリティが低ければ、大きな不満や評価ダウンを招きかねません。
TAM広告/リサーチチームでは、製品の品質とそれに対するユーザーの評価を知るのに適した「狩野モデル」を用いた調査も行っています。この調査では製品開発をはじめ、広くマーケティングに活かせるデータが得られます。
高機能なデジタルガジェットの販促に必要なこととは?
多様なストーリーを描き、次々に更新しながら訴求し続ける。
リサーチから得た気づきは、プロモーション戦略の意思決定、実行、改善を行っていく際の重要な判断材料になります。今回のイヤホンの場合だと、利用シーンや用途、ニーズの多様化が明白なため、競合他社との差別化ポイントとなる性能や技術を訴求するには、ただ単に機能の名称や数値の高さだけ言っても、ユーザーの興味関心を搔き立てるには不十分と言えそうです。
それよりも、ターゲットに応じたストーリーをバリエーション豊富に描くこと。さらに、技術進化と価格競争の激しいデジタルガジェットであることを考慮すると、それらのストーリーをスピード感を持って次々と訴求し続けることが有効だと言えるでしょう。
例えば、イヤーピースのフィット性の良さを訴求する場合、通勤時の想定ならば「長時間の装着でも高いフィット性を維持し、外出先で無くしにくい」、運動時の想定ならば「ハードな動きや衝撃でも耳から取れにくく、何度もつけ直す手間が不要」と言えます。
同じ運動であっても、ランニングであれば「走行時の身体の揺れに耐えるフィット性」、ヨガであれば「どんな向きのポーズでも落ちないフィット性」と言えます。
同一商品であってもコンテクストごとに訴求の仕方を変える、それに応じてプロモーション内容を変えるといった柔軟さを持つことが、より広くより長く製品の認知と販促を行っていくカギとなるのではないでしょうか。
イヤホンに限らず、最近のデジタルガジェットや家電製品は多様な機能や特徴があり、それ故に、何を訴求するのが得策なのか、誰にどんなふうに伝えるべきなのか、プロモーションの方向を見失いそうになることもあるかと思います。
そんな悩みを解消し、行うべきプロモーションの道筋やさらなる可能性を見出すのがリサーチです。プロモーションを有効に行い、製品の認知・販売を加速させるためにも、ぜひリサーチをご活用ください。TAMリサーチチームでは、そのお手伝いをさせていただきます。
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