【ECについてのアンケート調査#01】急速なECシフトで、ユーザー行動に変化はあるのか、ないのか?

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ECアンケート調査レポート

ECとどう付き合っているのか、ユーザー行動のリアルが知りたい。

コロナ禍で急速に進んだECシフトをはじめ、キャッシュレス決済の普及、D2Cブランドの台頭など、EC分野はめまぐるしく進化しています。

リサーチチームでは、大きな進化の過程にある今、ユーザーがECとどのように関わっているのか、そしてどう感じでいるのかを知るためにアンケート調査を実施。ECでこれからやるべき対策について考察しました。

調査レポートの担当は、リサーチチームの麦嶋と原がメインで進めました。今回の調査結果から「うんうん」と納得すること、「えっ?」と驚くこと、どちらの発見もありました。ぜひ最後まで読んでみてください。

 

目次

ECショップでのクレジットカード決済
大半のユーザーが”不安だけど仕方なく”クレジットカード情報を入力

SNSから遷移したECショップでの商品購入
Z世代の約4割がSNSから遷移した商品ページで購入経験あり

チャットボットによるオンライン接客
チャット機能を使用したことがない人が約7割も

まとめ
EC施策では、どんなことが考えられるか

 

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◆ECについてのアンケート ー第2弾ー
狩野モデルを用いてECショップの機能・サービスの評価を調査してみた

◆リサーチチームの調査サービス紹介
「狩野モデル」を用いたアンケート調査

 

大半のユーザーが ”不安だけど仕方なく” クレジットカード情報を入力

ECショップ_クレジットカード決済

過去1年以内にオンライン購入した人の割合は約80%

2020年に始まったコロナ禍は、ECシフトを早め、店舗での対面販売からオンラインでの販売への切替えを急速に進めました。

今回リサーチチームが実施したアンケートでは、過去1年以内にECショップで購入をした人の割合は約8割。年代別に見ても、Z世代75%、ミレニアル世代77%、X世代85%という結果になっており、世代によらず、オンラインショッピングをしている人の多さが見て取れました。

オンラインショッピングの経験(世代別)グラフ

 

ECショップでのクレジットカード決済は是か非か?

誰もが当たり前のように利用するようになったオンラインショッピングですが、決済にはどの方法を利用されているでしょうか?コンビニ振込、代金引換、インターネットバンキング等などありますが、総務省の調査によると最も多いのはクレジットカード決済です。

クレジットカードは後払いで購入ができ、使うたびにポイントが貯まるなど、利便性も高いのですが、情報漏洩や不正利用といったリスクがあることも事実です。そして、ECショップでのクレジットカード決済が、そのきっかけになる可能性もゼロではありません。実際、サイバー攻撃によってECショップから個人情報が漏洩した…というニュースも目にします。

ECショップでクレジットカード決済をすることに対してユーザーはどう思っているのか、アンケート調査で明らかにできれば…と考えました。

チーム内で意見を求めたところ、「一般化しているから、そこまで不安には感じない…」という人もいれば、「絶対危ない…もっと危機意識を持った方がいいと思う」という人もいて、人によってだいぶ認識が違っていました。

 

実態は「不安はあるけど仕方ない…」が約半数

アンケートで「オンラインショッピングでクレジットカード情報を入力することに情報セキュリティの観点で不安を感じますか?」との質問に「不安はない」と回答した人は1割に留まりました。この結果を見ても、ユーザーの大多数は情報セキュリティに不安を持っているというのがわかります。

ECショップでクレカ情報を入力する不安感のグラフ

しかし、不安を感じながらも「購入を諦める」は18%、「他の決済方法を選ぶ」は25%とそれぞれ少数派。最も多かったのは「仕方なくカード情報を入力する」という人で、全体の約半数にのぼりました。

欲しいものと出会ってしまうと、ガマンより手に入れたい欲求が勝ってしまう気持ちはよく分かるので、この結果は素直に頷ける内容でした。

 

不安の対象は、カード利用ではなくカード情報入力

一方で「実生活においてクレジットカードを使用することに抵抗はありますか?」という質問には、7割近くの人が「抵抗はない」と回答。消費者の不安の対象はクレジットカードの利用そのものではなく、カード情報の入力にあることが分かりました。

実生活でクレジットカードを使用する抵抗感のグラフ

この結果は、日本では海外に比べて店頭でのスキミング被害が少ないことが影響しているのかも知れません。特別な不安感を持たずクレジットカード決済ができる治安の良さ、道徳心の高さに感謝しないと…と思わされる結果でした。

 

Amazon PayやApple Payなどの導入が対策の一手に

近年は、Amazon Payや楽天 Pay、LINE Pay、Apple Payなど外部サービスのIDを利用した方法が増加傾向にあります。これらは、すでに登録されている各サービスの会員情報と連帯しているので、カード情報を新たに入力する必要がなく、IDとパスワードだけで決済ができる手軽さはとても魅力に感じます。

ECショップ側は外部サービスへの利用手数料がかかりますが、情報入力の手間もセキュリティの不安も同時に省けるというメリットをユーザーに提供でき、ひいてはそれがショップへの好感につながる可能性もあります。

もちろん、クレジットカードにも外部IDにもメリット・デメリットはありますが、それらを見極めつつ、ユーザーが心からショッピングを楽しめるよう考慮して対策を行うことが大切だろうと思います。

 

Z世代の約4割がSNSから遷移した商品ページで購入経験あり

ECショップ_SNS経由の商品購入

SNS経由で商品が購入されているのか、ホントのところが知りたい。

コロナ禍でおうち時間が増えこたことは、オンラインショッピングの他に、SNSの利用にも影響が見られており、その変化は年代の高い世代ほど顕著なようです。SNSは、もう若い世代だけのコミュニケーションツールではないと考えた方がいいのかも知れません。

EC施策にSNSの活用はますます欠かせないものになっていますが、SNSに起因する購買行動に性別や世代別による差があるのかは知りたい点です。

 

チームの仮説は「ページ遷移はしても、購入に至る人は少数」

今回のアンケート調査では「ECショップで商品を購入する際、SNSから直接ECショップの商品ページへ移動して購入したことがありますか?」という項目を設定。

リサーチチームとしては、利用者が広い世代に広がっていることや、Z世代などの若年層とSNSは相性が良いことなどを考え、次のような仮説を立てました。

・SNSから商品ページへ遷移する人は、Z世代より上の世代でも増えているのではないか。

・SNSは、主に情報収集の用途で使われているのではないか。

・SNSから商品ページへ遷移しても、購入にまで至る人は少ないのではないか。

 

多くのZ世代が、遷移したページで商品購入していることに驚き。

結果は意外で、過去1年以内に、SNSから移動したページで実際に商品購入しているZ世代は約4割もいました。Z世代とSNSの親和性が高いことは分かっていますが、情報収集の用途が大多数ではないか…という仮説を持っていたので、SNSからECショップに直接移動して購入している人が多いことには驚きました。

SNS経由で購入した経験(世代別)グラフ

SNSから直接商品ページに移動して購入したことのある人は、年代が高いほど少ないという結果になっており、X世代では約1.5割とZ世代の半分以下の割合でした。今後、年代の高い層がもっと活発にSNSを利用するようになった時、この割合がどう変化するのかは気になるところです。

 

男性と女性では行動に差が付く!?

男女間で比較してみると、SNS経由で購入した人の割合はどの世代でも女性より男性の方がやや高い結果となっていました。男性が買い物をする際はイメージよりもスペックを重視し、欲しい商品像が具体的に決まっていることが多いとされるため、求めているスペックを備えた商品がSNSに表示されれば、あまり迷うことなく購入を決める傾向にあるのかも知れません。

SNS経由で購入した経験(男女別)グラフ

 

ショッピングの仕方にもZ世代の行動の特徴が影響?

また、「メーカー直販のECショップで商品を購入したことがありますか?」という質問に「わからない」と回答したZ世代(女性:約15%、男性:約19%)が思った以上に多く、SNSから直接移動してそのまま商品購入をするというZ世代の消費行動が関わっていると推測しています。自ら調べて辿り着いたページではないので、その場所がメーカー直販のECショップかどうかよく分からない(記憶に残らない)…ということや、ネット利用はほぼスマホで行うZ世代にとって、辿り着いたECショップに関する情報がスマホの一画面ではわずかしか得られず、場所を特定するには至らない…ということが考えられます。

メーカー直販ECショップでの購入経験に「わからない」と回答した人の割合グラフ

 

チャット機能を使用したことがない人が約7割も

ECショップ_チャット機能

チャット機能は本当に顧客満足につながるのだろうか?

近年、ECショップに限らず、さまざまなサイトにチャット機能(主にAIチャットボットによる返答の自動化)が導入されてきています。商品やサービスに関する問い合わせに24時間いつでもその場で対応できるため、顧客満足向上が期待できる他、企業側としてもスタッフの人員削減や労働時間短縮につながるというメリットがあります。

今後もこのようなオンライン接客の傾向はますます強くなっていくと思われますが、控えめでシャイな日本人にどれくらい定着していくかはまだ未知数です。

 

チームの仮説は「ユーザーはチャットボットに満足していない」

リサーチチームとしては、導入は進んでいるものの、現在はどちらかと言えば企業側のメリット重視で、ユーザーにはあまり歓迎されていないのでは…?と考え、次のような仮説を立てました。

・チャット機能があっても、ほとんどの人は使っていないのではないか。

・AIチャットボットは使い勝手に不満を持たれているのではないか。

・日本人は控えめなので、有人チャットには抵抗があるのではないか。

・若い世代はチャットで訊くよりも自分で調べるのではないか。

 

チャット機能の定着はまだまだ遠いのか、一気に来るのか?

仮説どおり「使用したことがない」と回答した人が全体の約7割にのぼり、あまり活用されていないことが分かりました。使用したことがない人は、高い世代ほど多い傾向にありますが、デジタルに慣れたZ世代でも7割近くは使用したことがないと回答しており、まだまだ定着には時間がかかる状態と言えそうです。

逆に、使用率が増加に転じ始めれば、一気に大きく発展する余地がある機能と言うこともできるかも知れません。

チャット機能の利用経験グラフ

 

チャット機能との相性が良さそうなZ世代男性

興味深い発見はZ世代男性です。「使用したことがなく、抵抗がない」と回答した人の割合は他の世代の男性とほぼ変わらないのに対し、「使用したことがなく、抵抗がある」と回答した人の割合は他の世代より随分低く、2割を下回りました。つまり、使ってはいないものの、抵抗感はかなり薄いのです。

チャット機能を使用したことがない人の抵抗感の有無の割合グラフ

Z世代の男性と言えば、控えめで物静かなイメージがあったので、問い合わせの行為自体に抵抗がありそう…チャットで訊くより自分で調べていそう…と思ったのですが、そうでも無さそうです。チャット機能がZ世代男性と相性が良さそうなことは、オンライン接客の方法としてチャンスがある、とリサーチチームでは捉えています。

 

抵抗感をもたらしている原因はAIチャットボット?

しかし「使用したことがあり、抵抗がある」と回答した人の割合が、他の世代より多いのも無視できない結果です。抵抗感なく使用したものの、何かしらマイナスの経験をした、ニーズが満たされなかったことの表れだと思われるので、この原因を追求するとチャット機能の可能性が広がりそうです。

チャット機能を使用したことがあり、抵抗がある人の割合グラフ

例えば、今回のアンケートで、チャット機能に抵抗があると回答した人にその理由を問いましたが、そこで多かったのは「会話自体が面倒だから」「対面でないと解決できないことがあるから」という内容でした。

チャット機能に抵抗を感じる理由:ベスト3

AIチャットボットとのやり取りでは、会話の手間が掛かるわりに、したい質問や得たい回答になかなか辿り着けず、それが不満に繋がっているのでは?と推測しています。このあたりは次回以降の調査で深掘りできればと思っています。

 

EC施策ではどんなことが考えられるか

今回のアンケートでも、私たちの仮説に対する意外な気づきが得られ、有意義な調査となりました。結果を踏まえて、ECでどんな対策を行うべきか、どんな点に配慮すべきか考察してみます。

 

情報セキュリティの不安軽減に外部ID決済を検討

大多数の人が、ECショップでのクレジットカード決済に情報セキュリティ面で不安を感じているのが実状である。不安を軽減する対策として、購入手続き時にクレジットカード情報入力を求めないAmazon Pay、Apple Payなどの外部ID決済は有効と言えるだろう。

 

Z世代へのSNS施策は、購入を想定した上で

Z世代は、SNSから直接ECショップへ移動し、そのまま商品購入に至るケースも多い。SNSは情報収集の手段であると同時に、ダイレクトに購入に繋がる流入口として機能するため、リンク先の選定・設定はよく吟味したい。

 

メーカー直販のECショップであることを印象づける工夫を

直近1年にメーカー直販のECショップで商品購入を行ったZ世代は、他の世代より増加傾向にある。しかし、メーカー直販のECショップで商品購入を行ったことがあるか?の質問に「分からない」と回答する割合も他の世代に比べて多く、直販ショップかどうかの認識が曖昧である。再訪、再利用を促すにはショップをユーザーに印象づけ、きちんと認識してもらう工夫が必要だろう。

 

「Z世代男性」×「チャット機能」は大きな可能性を秘めている予感

Z世代男性はチャット機能への抵抗感が薄く、他の世代の男性や女性よりも相性が良いと言えるだろう。チャット機能をアプローチ手段に使い、商品選定のサポートや、おすすめ商品のプッシュ、マニアックな問い合わせへの対応をすることは、ECショップでの新しい施策になる可能性がある。

 

以上が、今回のアンケート調査のレポート#1です。めまぐるしく変わる今のEC分野において、ユーザーの関わり方、感じ方がどう変わっているのかを知るのが今回の調査の目的でしたが、結果をみる限り、ECショップを利用するユーザーの行動そのものは今までの変化の流れから外れておらず、いずれ起こっていたであろう変化が一足飛びに起きた…という印象です。

ユーザーが行動を変え得るのは、自身がメリット、ベネフィットを得られる場合であり、本質的に欲しい、嬉しいと思うものが好まれ、定着していく…という自然の道理は、どんなに変化のスピードが速くても変わらないのだと思います。どんな時代になろうと、本質を見極めて対処していくということがますます大事になってきそうです。

この調査と並行して、ECショップでは、どんな機能がユーザーの満足度を左右しているのかも調査しました。その結果はレポート#2にまとめましたので、合わせてご覧ください。

 

▼関連レポート▼

◆ECについてのアンケート ー第2弾ー
狩野モデルを用いてECショップの機能・サービスの評価を調査してみた

◆リサーチチームの調査サービス紹介
「狩野モデル」を用いたアンケート調査

 

▼アンケート調査概要▼

調査目的 EC分野がめまぐるしい進化の過程にある中、ユーザーがECとどのように関わり、どう感じているのかを知るため、アンケート調査を実施。ユーザー行動に変化があるのか、ないのかを調べ、これからECでやるべき施策について考察する。
調査期間 2021年3月15日~2021年3月25日
調査方法 オンラインアンケート
調査対象 18~54歳の男性、女性
回答者数 900人(男性:450人、女性:450人)
回答者属性 24歳以下(Z世代)男性:150人、女性:150人
25~39歳(ミレニアル世代)男性:150人、女性:150人
40歳以上(X世代)男性:150人、女性:150人